中学英語の難化

1. 中学英語の難化の背景と影響

  • 2021年の学習指導要領の改定により、中学校で学ぶ英語がこれまでよりも高度なものになりました。従来は高校で扱っていた文法事項が中学に前倒しされており、例えば現在完了進行形や仮定法といった複雑な文法が中学校で教えられるようになっています。
  • 単語数の大幅な増加も難化の要因です。以前は中学校で1200語を学習していましたが、現在では小学校で600~700語を学んだ後、中学ではさらに1600~1800語を学習する必要があります。このように、中学校に入る時点で、すでにかなりの英単語を知っている前提があるため、特に小学校で英語学習が十分でなかった生徒にとっては、学習のスタート時点でハンデを感じることが多くなります。
  • 影響: この変更により、英語の授業内容が急激に難しくなり、学力差が広がるとされています。特に、授業についていけない生徒や英語が苦手な生徒にとっては、追いつくのがますます困難になり、結果として英語嫌いが増加しているという現状があります。

2. 単語数の増加とその影響

  • 需要語彙と発信語彙の区別: 学習指導要領では、すべての単語を完璧に使いこなす必要はないとされています。単語には「需要語彙」と「発信語彙」があり、需要語彙はリスニングやリーディングで意味を理解できれば良い単語であり、発信語彙は実際に話したり書いたりするために使える必要がある単語です。つまり、すべての1600~1800語を自分で使える必要はなく、必要な単語を状況に応じて理解できればよいという方針です。ただし、上位校に入学を希望する方は全ての単語を網羅しましょう。
  • 問題点: この「需要語彙」と「発信語彙」の具体的なリストは定められていないため、教科書によっても扱う単語が異なります。このばらつきが、学習者にとって混乱を招いています。教科書の太字の単語が重要単語だと思われがちですが、それも必ずしも発信語彙に当たるわけではないため、生徒がどの単語を確実に覚えれば良いのかが明確でないという問題があります。

3. 文法指導の変化とその影響

  • 文法項目の前倒し: 文法に関しても難易度が上がっています。中学2年生で教わるはずの文法項目が、中学1年生に前倒しされるケースが見られ、教科書もこの変化に対応する形で、難しい文法項目が早い段階で導入されています。例えば、助動詞や不定詞、動名詞といった文法が初期段階で登場し、さらに複雑な構文に早期から取り組む必要があります。
  • コミュニケーション重視の方針: 新しい学習指導要領はコミュニケーション重視の内容にシフトしており、日常会話や実用的な表現を早い段階で教えるように設計されています。しかし、その一方で、文法の習得が中途半端になり、生徒が文法の理解を十分に深められないまま授業が進んでしまうことがあります。結果として、生徒たちは会話表現を覚えることに重点を置きながらも、文法的な理解が追いつかないという問題に直面しています。

4. 学力格差の拡大とその原因

  • 公教育と民間教育の差: 学力格差の拡大は、公教育だけに依存している生徒と、塾や家庭教師といった民間教育にアクセスできる生徒の間で顕著です。学校だけで英語を十分に習得できない生徒は、塾や追加の家庭学習に頼る必要があり、これが結果として経済的な格差が学力の差に直結している現状があります。
  • 塾の必要性: 講師の立場からは、塾に通うことが有効な解決策として提案されています。英語塾では学校の授業で不足している部分を補完でき、特に単語力や文法力を強化することが可能です。生徒が学校外でどれだけ追加の勉強をしているかが、英語の成績に大きく影響しています。

5. 単語力強化の重要性と具体的な対策

  • 単語学習の重要性: 特に単語力の強化が英語学習の鍵であると強調されています。単語は英語の基礎であり、これをしっかりと覚えることが、リーディングやリスニングの力を高め、発信力の向上にもつながります。単語を覚えることで、英語を聞いたり読んだりする際の理解度が高まり、さらに会話やライティングにおいても自信を持って使えるようになります。
  • 具体的な学習法: 自分に合った単語の覚え方を見つけることが重要で、「見て、書いて、発音して覚える」という基本的な暗記法が重要です。日常的に英語をアウトプットできる環境を設定する、或は継続が難しいですが、自分で単語帳や教科書の太字の単語をベースに定期的に復習することが効果的です。スムーズに単語を覚えるためには、日常的に単語に触れることや繰り返しの練習が必要で、単語の綴りを覚えることが特に大切だとされています。

6. 公教育と民間教育の課題

  • 繰り返し学習の限界: 文科省は詰め込み教育を避け、繰り返し学習によって自然と語彙が定着するという方針を打ち出していますが、現実にはこれがうまく機能していないとされています。塾などの補助がなければ、多くの生徒は繰り返し触れるだけでは単語や文法を十分に習得できません。
  • 詰め込み教育の価値: 一部の生徒は、詰め込み学習によって語彙や文法を覚え、結果的に英語力を強化しています。詰め込み学習を通じて基礎を固めることで、その後の学習がスムーズに進むという考え方もあります。復習せず、1回限りの学習では知識や記憶の定着は難しいです。

結論: 英語学習における最適な戦略

  • 早期の単語学習の重要性: 英語力を伸ばすためには、早期から単語を徹底的に覚えることが重要です。これにより、リスニングやリーディングの力が向上し、より複雑な内容にも対応できるようになります。
  • 自分に合った学習方法の発見: それぞれの生徒に合った暗記法を見つけることが必要で、効率的な学習を支援するためには、英語塾などのサポートも検討する価値があります。
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